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「いやぁお嬢ちゃん、夜にこんな人気のないところを歩いたら危ないよ。俺はただ通りかかって、心配で声をかけようと思っただけさ」
「ふーん」
違う。
男はかなり近くに来るまで気配を絶っていた。しかも、声をかけようと思っていただけならば、物陰に潜む必要がない。
「残りの3人は?」
「はっ! 最初から気づいてたってわけか」
私の言葉で開き直ったのか、隠れていた3人が姿を現した。
「気配を消すのが上手いのが、俺たちの唯一の取り柄なのになぁ!」
隠れていた場所から出てきた男は、何がおかしいのか豪快に笑いながら言う。かと思えば、突然声をワントーン下げ「……なんで気づいた?」と鋭い瞳で睨みつけてきた。
この男の言う通り、こいつらは気配を消すのがプロ級に上手い。ランカーでもよほど意識しなければ気づかないだろう。
だけどこいつらは相当運が悪い。
なぜなら……
私を標的にしてしまったからだ。
「ほんと、運が悪いね」
「は? 急に何言ってんだお前」
「これだから、5万のポーションも買えないような貧乏冒険者は嫌いなんだよ。ねぇ? …………私を詐欺師呼ばわりした新規さん」
昼間、私のことを詐欺師呼ばわりした挙句、結局ポーションを買わなかったその男は、ニヤリと口角を上げた。
「実績もない雑魚冒険者だからなぁ俺たちは! 買えないなら奪うしかねぇんだよ!」
「違うでしょ」
「は? 何が違うんだよ」
私はトランクを地面に置き、ローブのフードを取ると、男の目を見て言う。
「実績がないんじゃない。作ろうとしていないだけだ」
私の言葉に、男は醜く顔を歪めた。
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作者名:星月未来 | 作者ホームページ:https://mypage.syosetu.com/2614418/
作成日時:2024年4月18日 19時